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論文紹介LUCUBRATIONS

海外文献紹介「2型糖尿病の発症率を高める食物:赤肉・加工肉・ベーコン」

MedicalWay

アンチ・エイジング医学15(6):078(722)-079(723), 2019.

Role of diet in type 2 diabetes incidence: umbrella review of meta-analyses of prospective observational studies.

Neuenschwander M, Ballon A, Weber KS, et al. BMJ. 2019; 366: l2368.

糖尿病患者の平均寿命は約10歳短く、糖尿病は老化を加速することが知られている。また糖尿病患者ではガン・炎症・認知症などのリスクが増大する。しかも世界的には2型糖尿病は年々増加している。これを予防するために生活習慣の食の部分を見直すことは重要である。

本論文は、ドイツ・ノルウェー・英国の研究者が今年7月のBMJに発表した。Pub Medなどで検索した53の前向き観察研究のメタ分析を集め、解析したアンブレラ・レビューである。アンブレラ・レビューとは最近注目の分析法で、メタ分析を超える新しい解析法として今後増えると予想されている。

糖尿病の発症に関わる食物は何か、反対に発症を低減する食物は何かを、ハザード比とそのエビデンス・レベルで示している点が目新しい。ここではエビデンス・レベルが最も高かった7つの食物について解説する。

糖尿病の発症を低減する食物は、全粒穀物(1日摂取量=30g/日、ハザード比=HR 0.87)、シリアル繊維(穀物繊維)(10g/日、HR 0.75)、適度のアルコール摂取(12-24g/日、HR 0.75)であった。参考までに20g/日のアルコール量とは、ビール500ml、ウイスキー・ダブル1杯、赤ワイン・グラス2杯、である。

一方、糖尿病の発症を高める食物は、赤肉(100g/日、HR 1.17)、加工肉(50g/日、HR 1.37)、ベーコン(薄切り2枚/日、HR 2.07)、砂糖入り飲料(1サービング/日、HR 1.26)であった。米国では1サービング(1回摂取量)は240mlであるが、論文中には1サービングが何mlかは書かれていない。

これらの食物と2型糖尿病発症との関連についてのメカニズムは以下のように考察されていた。簡単に紹介する。

全粒穀物とシリアル繊維は、ファイトケミカル、ビタミン、ミネラル、食物繊維などを精製穀物に比べて多く含む。これらの食物摂取は、インスリン感受性の増加、空腹時インスリンの低下、C反応性タンパク(CRP)などの炎症マーカーの低下、アディポネクチンの高値、内臓脂肪蓄積の減少と関係し、2型糖尿病の発症リスクを低減するとしている。

赤肉、加工肉、ベーコンを食べると、空腹時血糖や空腹時インスリンが高くなり、CRP、フェリチン、糖化ヘモグロビン、γ-GTPなども増加、体重も増加する。また、これらの食物に多く含まれる終末糖化産物(AGEs)は、一部は体に吸収されて炎症マーカーを増加し、2型糖尿病発症のリスクを高める。

砂糖入り飲料はカロリーオーバーを招き、体重増加と肥満のリスクを高める。血糖は上昇し、インスリン抵抗性を招き、2型糖尿病発症のリスクを高める。

適度のアルコール摂取は2型糖尿病のリスクを低減することが示されたが、著者らはアルコール摂取による肝障害やアルコール依存症などの問題を考える時、今回の結果を単純には推奨できないとしている。

過去の論文で食物と糖尿病との関係が多く報告されているが、大量のデータを分析してハザード比とそのエビデンス・レベルを示されると説得力がある。(執筆:満岡)