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男性更年期障害

Male climacteric disturbance
更年期と加齢のヘルスケア13(1):151-158, 2014.

概要
更年期という言葉は、本来は女性の月経閉止の時期をさした。しかし、最近は「男性更年期」という言葉も使われるようになってきた。

更年期と更年期障害は、混同されている面があるが、本来は区別して使われるべきものである。更年期にあっても、何らの症状を覚えず、更年期障害を知らずに過ごす人も少なくない。

男性の場合、女性のような急激な女性ホルモン低下はないが、それでも男性ホルモン(フリーテストステロン)は、25歳頃から徐々に低下しはじめ、50歳頃から低下は著しくなる。ただ、その程度は個人差が大きい。女性更年期は、閉経前後の5年間と定義されるが、男性更年期については、このような明確な定義はない。あえていえば50歳前後の約10年間であろうか。

月経のことを生理と呼ぶが、これに相当する男性の生理は、早朝勃起(いわゆる「朝立ち」)である。男性は眠っている間に無自覚に何回も勃起を繰り返している。これを夜間睡眠時勃起と呼ぶが、朝目覚めた時に、その夜の最後の勃起に気づく。これが早朝勃起である。20歳頃は、睡眠時間の半分は勃起しているが、男性ホルモンの低下とともに、勃起時間は短くなり、早朝勃起に気づくことが少なくなる。「少なくとも一日おきに気づく」人は、男性ホルモンの低下はない。「あまり気づかない」あるいは「全く気づかない」人は、男性ホルモン補充の適応となるほど男性ホルモンが低く、まさに男性更年期にあると言える。女性の月経と同じように、男性の早朝勃起は自覚できる健康のバロメーターとなる。

男性更年期は、男性にとって家庭でも仕事でも責任ある立場にあり、心理的ストレスがかかりやすい。ストレスが高度に長期に続けば、男性ホルモン低下に拍車がかかり、男性更年期障害に陥りやすくなる。

男性更年期障害の症状は、女性の場合と基本的には変わらないが、男性の場合、うつ症状が強く出やすく、勃起障害(ED)がおこる。

日本の自殺者は年間3万数千人に及ぶが、男性更年期にある男性が5分の1を占める。この中には男性更年期障害によるうつ病が隠れている可能性がある。男性更年期障害についてぜひ女性にも知ってもらいたい。

(更年期と加齢のヘルスケア 13:151-158, 2014.)

キーワード
男性更年期障害、夜間睡眠時勃起、早朝勃起、うつ病、勃起障害

RTD参加者の職業と参加理由

本ラウンドテーブルディスカッション(以下RTDと略す)中は、参加者の了解を得て、テープに録音し、執筆のための参考とした。会話を文章にするに当たって、発言者の意図を十分に反映していない個所もあるかもしれないが、ご容赦いただきたい。

本RTDには12人が参加された。いろんな職種の方がおられ、本学会の特徴がよく出ていると感じた。参加者の仕事と本RTDに参加された理由を短く、イニシャルで紹介させてもらった。御本人の意図と異なる個所があればお許し下さい。

はじめに

男性更年期について、社会的に少し認知されてきたように思う。保険診療でも、男性更年期と加齢男性性腺機能低下症候群(LOH症候群)の疑い、の病名をつけると、東京や北海道では男性ホルモン測定を保険でできるという話を聞いた。そういうところまで、やっときたかという印象である。ただ、ホルモン補充療法をするとなれば、欧米で主に使用されている男性ホルモン軟膏は、保険薬として日本にはないので、2週間に1度、エナルモンデポーという注射薬を打つことになる。ただ、保険適応になるかはわからない。

男の生理

本学会は女性の会員が多いので、女性更年期障害と男性更年期障害を対比して、話した方が分かりやすいと考えた。

女性に生理があるように、男性にも生理がある。

女性の月経に相当する男の生理は、早朝勃起で、いわゆる俗にいう「朝立ち」である。すなわち、朝目覚めた時にペニスが勃起しているのを自覚する。これが早朝勃起である。性的興奮で勃起するのとは違い、男は眠っている間に何度も勃起を繰り返している。20歳代は睡眠中の半分は勃起しているといわれている。

睡眠はノンレム期とレム期の2相に分けられる。ノンレム期には、体の姿勢を保つ抗重力筋の緊張は維持され、一方、脳は完全に休息して夢をみることもない。ノンレム期は第一段階の浅い眠りから第4段階の深い眠りまで、4つの段階に分けられる。一方、レム期には、抗重力筋の緊張は完全に消失し、反対に脳は活発に活動している。このレム期に、腸が動き、眼球が動き、夢を見る。副交感神経は興奮状態にあり、腸がごろごろ動いて食物を肛門に向けて送る。内臓の一つと考えられるペニスも副交感神経の影響で勃起を繰り返している。ずっと勃起していると問題であるが、勃起し、また静まり、と夜中に何度も繰り返している。これは夜間睡眠時勃起とよばれ、最後の勃起を目覚めた時に気付くのが早朝勃起であり、これが男の生理である(図1)。

図1.男の生理=早朝勃起文献1の図1より引用

図1.男の生理=早朝勃起

レム睡眠期には、体の姿勢を保つ抗重力筋の緊張は完全に消失するが、反対に脳は覚醒時のように活発に活動している。副交感神経も興奮状態にあり、内蔵は動き、腸は食物を肛門に向けて送る。内蔵の一つと考えられるペニスも副交感神経の影響で勃起を繰り返している。ずっと勃起していると問題であるが、勃起し、また静まり、と夜中に何度も繰り返している。これを夜間睡眠時勃起とよび、その夜の最後の勃起を朝目覚めた時に気付くのが早朝勃起であり、これが男の生理である。

20〜30歳代の女性が何か強いストレスを感じた時、一時的に無月経がなる。それと同じように男性も強いストレスが加わると、早朝勃起を感じなくなってくる。女性の月経のように、男性にとって早朝勃起は自覚できる健康のバロメーターとなる。

加齢とともに男性ホルモンは低下

図2の左上のように、女性ホルモンは更年期に激減し閉経にいたる。真ん中の図のように、男性ホルモンのうち、活性が強いフリー(遊離)テストステロン(Free-T)は加齢とともに低下し、特に50歳くらいからその低下は著しくなる。

図2.Free-Tの加齢による下降の水位文献2の図19より引用

図2

フリーテストステロンは活性の強い男性ホルモン。50歳ころから男性ホルモン低下は顕著になる。女性は閉経後、女性ホルモンは急速に低下するが、男性の場合、ホルモン低下にはかなり個人差がある。極端に低い人がいる一方、20歳代の高いレベルを保っている人もいる。早朝勃起もない、セックスもない、という人は、男性ホルモンがかなり低いことが疑われる。最終的には、フリーテストステロンの測定が必要。

フリーテストステロンが12pg/ml 以上はホルモンレベルは低くない。8.5〜12はグレーゾーン、8.5以下は少なく、ホルモン補充療法の適応である。ただホルモンレベルは個人差が大きく、50歳代でも20歳代のホルモンレベルを維持している人もいる。

女性の閉経は50〜52歳と言われているが、閉経後は全ての女性で女性ホルモンは20pg/ml以下になる。女性と違って男性の場合は、ホルモンレベルに個人差があるため、50歳代だからといって一概に男性更年期にあるとは言えない。

早朝勃起と男性ホルモンレベル

早朝勃起は、60歳代前半からあまり気づかれなくなり、70歳代半ばでは半数以上が、80歳代前半では4分の3が、気づかなくなる文献2

早朝勃起の自覚率とフリーテストステロンの相関は、フリーテストステロンが12pg/ml以上ある時は、一日おきに早朝勃起を感じる。12〜8では週に1〜2回、8〜4では時々、4以下になると全く感じなくなる、ことが示されている文献2

更年期の男はストレスに弱い

男性更年期世代に強いストレスがかかると、更年期障害を発症する誘因となる。特に50〜60歳代の男性は、社会において管理職的な立場にあることが多い。上からは色々と言われ、下からは突き上げられ、ストレスがたまる。家庭では子供が進学する時期に重なり、一家の大黒柱として責任も大きい。この時期には男性ホルモンも低下してくるので、若い時と違い、ストレスによってうつ状態に陥りやすい。うつ状態は勃起能の低下をまねく文献3

ストレスによる視床下部の抑制と性ホルモンの低下

男性の場合、ストレスがかかると脳の視床下部が抑制され、性腺刺激ホルモンが出なくなり、精巣からの男性ホルモン分泌が低下する。これが更年期に起こると、加齢による男性ホルモン低下に加わって、ストレスによる男性ホルモン低下が重なり、症状はさらに深刻となる。また、ストレスによる心因反応でうつ状態に陥る。早朝勃起も感じなくなり、勃起障害が起こる。

女性の場合も、強いストレスがかかると視床下部が強く抑制され、脳からの性腺刺激ホルモンが出なくなり、卵巣からの女性ホルモン分泌が低下する。その結果、排卵がなくなり、月経が止まる。これは更年期世代でない女性にも起こる。

男性更年期障害の症状

男性更年期障害の症状は、本質的には女性と同じである(表1)。ホットフラッシュもある。ただ女性の発症が閉経をはさんで5年前後なのに対し、男性の場合、発症時期は女性よりも5年ほど遅れる文献5。また、男性の場合、ほとんどの例で性欲減退と勃起障害を合併する。

表1.女性の更年期障害による臨床症状文献4の表1より引用

表1.女性の更年期障害による臨床症状

ここには女性の更年期障害による症状をあげているが、程度の差こそあれ、男性の更年期障害の症状も質的には同じである。

女性の場合、更年期には女性ホルモン(E2)は20pg/ml以下とかなり低値になるため、女性ホルモン低下による自律神経症状が強く出やすい。男性は男性ホルモンが低値だといってもある程度保たれているため、ストレスによる心因反応で抑うつ症状が強くでやすい(表2)。そのあたりが男性と女性では違う。

表2.男女の更年期症状発症病理の差異文献4の表2より引用

表2.男女の更年期症状発症病理の差異

男性の場合は、性ホルモン低下が女性より著しくないので、自律神経症状は少なく、むしろストレス性心因反応による抑うつ症状が前面にでやすい。

また、男性の場合、年齢によっても症状の出方が違う。30〜50歳代は過剰なストレスに反応して、抑うつ症状が前面に出てくる傾向がある。60歳を過ぎると、男性ホルモン低下によるホットフラッシュなどの自律神経症状が前面に出るようになる文献3。70〜80歳代になってもホットフラッシュが出てくることがあるが、それまで保たれていた男性ホルモンが低下してきたためと思われる。

男性更年期世代の自殺

今、日本の年間自殺者は3万数千人で、このうち男性更年期世代の自殺率は20%である。更年期世代の自殺には、原因の一つとしてうつ病があり、そのうつ病の中に男性ホルモン低下による更年期障害が紛れ込んでいる可能性がある。そういう意味でも男性更年期に対する認識は重要である。

フリーディスカッション

(参加者による質問はQ、座長による答えはAで示しています。この部分は意図的に口語体で書きました)

Q:男性ホルモンの低下を和らげるようなものがありますか?

A:あります。タマネギ、ニンニク、ニラ、ギョウジャニンニク、長ネギ、ラッキョウなどのネギ属に含まれる含硫アミノ酸には、男性ホルモン増加作用があることを、東海大学・前副学長の西村弘行教授が発表しています。電子レンジで2分間、タマネギを丸ごと温めてから、調理するのがコツだそうです。
また、筑波大学の鰺坂教授は、中程度の有酸素運動を週3回、1回90分、12週続けると、男性ホルモンが増えることを報告しています。

Q:先生のところでは、男性ホルモンを出していますか?

A:グローミンという男性ホルモン軟膏を使っています。これは保険薬ではないので、自由診療です。
この軟膏は、昔はOTCとして薬局などで売られていましたが、当院では処方薬として出しています。ただホルモン濃度が1%と低いことが難点です。十分効果がでない人もいます。アメリカの軟膏は10%ですが、アメリカからの個人輸入は規制が強く、今はできません。オーストラリアからは個人輸入ができますが、濃度は5%です。これは試してみたいと思っていますが、値段は少し高いようです。したがって、今のところはグローミンでやっています。それで効果がない人は注射薬しかないかと思っています。注射薬にはエナルモンデポーというのがあります。もともと保険薬ですが、LOH症候群、男性更年期障害の病名で、この注射薬が保険で使えるか、よくわかりません。この注射薬は、打った直後は非生理的な高いレベルまで男性ホルモンは増加しますが、その後は低下し、ホルモンを維持するために、2週毎に注射を繰り返す必要があります。

Q:グローミンはどこに塗れば効果的ですか?

A:推奨は陰嚢です。陰嚢と普通の皮膚とでは、吸収率が20倍ほど違います。顎の下の皮膚は陰嚢と同じ吸収率と報告されています。オーストラリアの5%の軟膏も陰嚢に塗布するように書かれています。アメリカの軟膏は陰嚢には塗るなと書かれています。濃度が高いので、普通の皮膚に塗布しても吸収は問題ないのでしょう。

Q:男子更年期障害の場合、婦人科に連れて行くのですか?

A:ふつうは泌尿器科です。泌尿器科では、注射薬のエナルモンデポーを使用することが多いようです。うつ症状が強い人は、男性ホルモン濃度が低いので、注射薬で高濃度のホルモンレベルに上げた方が効果を早く実感できると、日本メンズヘルス医学会・理事長の熊本悦明先生は言われています。

Q:女性更年期障害の場合、婦人科ならどこででも治療してくれるというわけではありません。男性の場合は泌尿器科ならどこででもいいのですか?

A:婦人科と同じで、泌尿器科ならどこででも男性更年期障害に対応できるとは限りません。 その辺は確認してから受診したほうがよいと思います。
また、治療の前提として前立腺がんマーカーであるPSAのチェックが必要です。PSAが2ng/ml以上は、男性ホルモン(アンドロゲン)補充療法(ART)は原則的にしません。ただ2〜4では本人とよく相談し慎重に治療する場合もあります。ARTをやっている間に前立腺がんになったのであれば、それはARTによってがんが発症したのではなく、もともとあった前立腺がん細胞がARTによって増殖が促進されたと考えるようです。ARTをやるときは必ずPSAを定期的に測ることが重要です。

Q:女性の更年期障害は、環境要因と本人の気質が影響すると勉強しました。ストレスは環境要因だと思いますが、男性の場合にも、気質的なものが関係するのでしょうか?

A:あると思います。ストレスをうまく発散できない人や内向的な人はなりやすいかもしれません。最近、ビタミンD不足はうつ病になりやすいという報告があります。また、脳の働きにビタミンB群は欠かせません。したがって、従来気質と言われていたものに、実はビタミンやミネラルなどの栄養不足が関係している可能性はあるかも知れません。

Q:男性更年期障害の問診票は何を使うのですか?

A:男性も女性と同じようにSMIを使います。同時にうつ病の問診にSDS、勃起能を見るのにIIEF、これに国際的な男性更年期障害の問診票であるAMSを使っています。AMSは外国で作成された問診票なのでセックスについてオープンなところがあり、日本では馴染まないということで、札幌医大名誉教授の熊本悦明先生が熊本式問診票を作られています。それとIPSSという前立腺肥大による排尿障害をチェックする問診票も使います。

Q:男性更年期障害に伴うEDの治療はどうするのですか?

A:ART だけでEDが改善しない場合は、PDE5阻害剤を併用しています。PDE5阻害剤には3種類あり、作用時間が長いか短いかの違いで、効き目は変わらないと思います。 昔バイアグラというのが有名でしたが、私は作用時間の長いシアリスを今は使っています。

Q:男性更年期障害の原因は、ホルモン低下でしょうか、あるいはストレスが主因でしょうか?

A:まず加齢により男性ホルモンが低くなることが先にあり、これにストレスが加わってさらに男性ホルモンが低下する、ということだと思います。ただホルモンの測定で注意しなければならない点は、男性の場合、午前に高く、午後には低くなるという、日内変動があるということです。ですから何時に採血したかはホルモン値の評価の上で大切です。基本は早朝空腹時と思います。女性の場合は、月経周期のどこで採血したかでホルモン値も変わってきますので、1回だけではなかなか診断がつかない時もあります。2〜3回採血して、生理のどの時期であったかを頭に入れて判断します。

Q:SMIの結果と、AMSの結果は、どのくらい相関するのでしょうか?

A:臨床的には両方ともよく相関すると思っています。ただ、SMIは女性を対象に作られているので、勃起能に関しての問診はありません。AMSの場合は男性を対象に作られているので、勃起能についての問診があります。待ち時間に問診を書いてもらっていますが、抵抗なく患者さんは書いてくれます。

Q:仕事のストレスが多い場合、家族としてどういうサポートができますか?

A:抑うつ的になっているとか、セックスがなくなった時は、更年期障害かもしれないと考えた方がよいでしょう。受診する時は、本人と一緒に受診してもらう方がよいと思います。最初は本人だけで来られることもありますが、次回は奥さんも一緒に受診してくださいと言います。中には奥さんの方が心配して「主人は男性更年期障害ではないでしょうか?」と連れてこられる場合もあります。夫は更年期障害で、実は病気である、ということを家族が認識してあげることはすごく大事です。男性も女性も更年期障害を学んで、互いにつらい身体状況を理解してあげることが重要だと思います。病気という理解がないと、家族内でつらい状況におかれることもあるかもしれません。日本の場合は50歳になると、半分はセックスレスで、ベッドも別々、部屋も別という人もでてきますから、そうなると夫の勃起能障害を妻は気付かないでしょうね。ですから家庭でのよい夫婦関係が、早期に互いの更年期障害を知る上で大切だと思います。

Q:更年期の期間は男性の場合どうなっているのですか?

A:女性の場合は閉経前後の5年間、したがって一般的には45から55歳くらいまでの10年間です。男性の場合、男性ホルモンがどの時期から低下してくるか個人差があります。平均的には50歳ころから低下してくるので、40〜60歳くらいでしょうか。

Q:いわゆる草食系男子といわれる最近の若い人たちの男性ホルモンはどうなっているのですか?

A:草食系男子といわれる人たちの男性ホルモンは非常に低いようです。ARTの適応と考えられるほど低い人もいます。だからと言ってセックスパートナーがいなかというと、半分以上はいる。それだけ低くなっても勃起能は維持できていると考えられます。必ずしもうつ状態になっているわけではない。なぜそんなにホルモンレベルが低いのかよくわかっていないのですが、ひとつには環境汚染による男性ホルモン撹乱物質が関係しているかもしれません(文献6)。

Q:男性更年期世代で、うつ症状が前面にでるタイプと、ものすごく激高しやすいタイプがあるように見受けられますが、後者も男性更年期障害としていいのですか?

A:激高しやすいタイプは、更年期障害だけでは説明がつかないかも知れません。もちろんホルモンレベルがどうなっているか測定する必要はあるでしょう。ホルモンだけの問題ではなくて、先にも話したように脳の働きをサポートしているビタミンB群不足や、セロトニンやドーパミンの原料となる必須アミノ酸のトリプトファンやフェニールアラニンなどの不足が関係しているかもしれません。セロトニンやドーパミンの合成不足は気分変調につながります。お酒を飲む人は、相当ビタミンB群は不足しています。その上、タンパク質を十分にとらない人もいる。メタボだから栄養不足とは考えられない、と思っている人は多いが、ビタミン、ミネラル、必須アミノ酸、必須脂肪酸などの不足は、いつも考えておく必要があります。

Q:運動に興味をもたせるには?

A:過度な運動は男性ホルモンを低くします。しかし適度な運動を定期的にすることは、先に述べたように男性ホルモンの増加につながります。ジムにわざわざいくのは大変だし、私のクリニックがある北海道では、冬には外での運動は転倒の危険もあり勧められない。家でできるダンベル体操やステップ台を使った昇降運動を勧めています。

終わりに

ディスカッションの時間を十分に取りたかったため、スライドは最小限にとどめた。お陰でディスカッションは大いに盛り上がった。それでも時間が足りず、疑問が残ったままの方もあったかも知れない。座長としては、女性更年期障害と対比して男性更年期障害を浮き彫りにしたかったが、十分に果たせたか心もとない。

最後に一言。本RTDで、ベストラウンドテーブル賞をいただいた。参加下さった皆様の熱い議論のお陰と感謝申し上げます。

 

文献

  1. 熊本悦明:男の生理とストレス.日本心療内科学会誌 13(2):34−45, 2009.
  2. 熊本悦明:男性ホルモンは総合的男子力の源 ー男性ホルモン悪役説から解放され男をもっと長生きさせようー.日本臨床内科医会会誌 28(1):83−96, 2013.
  3. 熊本悦明:男はいつまで男たりえるか ー中高年男性の性を考えるー.Geriat. Med. 43(2): 269〜293, 2005.
  4. 熊本悦明:男子更年期序説 ーMale climactericからPADAMまでーその存在をめぐる1世紀に亙る議論の歴史を辿ってーホルモンと臨床 49(9): 1〜9, 2001.
  5. 熊本悦明:男子更年期 ーlate-onset hypogonadismの初期段階として考えるー心療内科 8(3) : 2004, 153〜158, 2004.
  6. 池岡清光ら:草食系男子のホルモン動態.日本医事新報 2013年8月10日発行

>ベストラウンドテーブル賞を受賞

>第12回ベストラウンドテーブル賞を受賞して

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