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論文紹介LUCUBRATIONS

コロナに打ち勝つための栄養素サプリメント

更年期と加齢のヘルスケアVol.20

満岡孝雄
コロナに打ち勝つための栄養素サプリメント
更年期と加齢のヘルスケア 20(1): 32-37, 2021.

概要

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が全世界に広がって1年が過ぎたが、感染力の強い変異ウイルスも見つかり、未だ収束の見通しは立っていない。日本でもワクチン接種がはじまったが、日本人に対する効果や副反応は未だ明らかではない。こうした状況では、三密を避けるとともに、各自の免疫能を増強してCOVID-19に罹患しないようにつとめることが、最大の防御法ということになる。本稿では免疫能を増強する栄養素やサプリメントをとりあげた。生体の免疫能は栄養状態で支えられている。低栄養でサルコペニアでは免疫能が低下している。免疫能を保つために日頃からタンパク質を十分に摂取することが必要である。特に分岐鎖アミノ酸やグルタミンなどのアミノ酸を多く取りたい。ビタミンAは免疫能の維持に関係しており、リンパ球形成やサイトカイン発現、抗体産生などに作用することが示されている。亜鉛は自然免疫と獲得免疫の両方の維持に重要なミネラルである。ビタミンCは抗酸化作用に加えて免疫調整作用を有している。ビタミンDは免疫調整作用や抗炎症作用を有していることが知られているが、ビタミンD濃度が低いほどCOVID-19に罹りやすく、重症化し、死亡率が高くなることが報告されている。食物繊維は短鎖脂肪酸の産生(乳酸や酪酸)を亢進させ、生体には抗炎症的に作用する。乳酸菌やビフィズス菌のプロバイオティクスは血中インターフェロン産生を亢進させて感染予防に働く。

キーワード(5個)
COVID-19 免疫能 ビタミンD ビタミンC 亜鉛

はじめに

2019年12月に中国武漢ではじまった新型コロナウイルス感染症(以下COVID-19と略す)は、2020年2月のさっぽろ雪まつり後に札幌北海道で流行がはじまり全国に広まった。昨年11月下旬からはじまった第3波は東京大阪周辺の都府県に発令された緊急事態宣言で収束に向かいつつあるようにみえるが、一方では感染力の強い変異株も日本で見つかり、まだ予断を許さない状況である。2月中旬よりワクチン接種が国立病院の医療従事者を中心にはじまった。これにより日本人に対するワクチンの効果と副反応が明らかになると考えられる。COVID-19がいつ収束するかわからないが、3蜜を避けつつ、COVID-19に罹患しないように免疫能の増強をはかることが我々のできる最大の防御法となる。本稿では特に免疫能増強のための栄養素とサプリメントについて解説する。

免疫とは〜ウイルス感染における自然免疫と獲得免疫〜

まず免疫について説明する。図1には、ウイルス感染時の主要な自然免疫と獲得免疫の働きをイラストで示している。

図1.ウイルス感染に対する主要な自然免疫および獲得免疫

図1ウイルス感染に対する主要な自然免疫および獲得免疫 感染初期には左に示す自然免疫が作動する。インターフェロン(IFN)とNK細胞が主に連動してウイルス排除に働く。排除に成功すれば発症しない。自然免疫が突破されると、右に示した獲得免疫が次に作動し、抗体と細胞傷害性T細胞が主に働き、最終的にウイルスを排除する。同時に再感染に対する防御能と免疫記憶を獲得する。

左が自然免疫、右が獲得免疫であるが、まずウイルスに感染すると自然免疫が作動し、主にインターフェロンとNK細胞(ナチュラルキラー細胞)が連動してウイルス排除に働く。この段階でウイルスが排除されると病気は発症しない。しかし、この一次防衛ラインが突破されると、数日後から獲得免疫が働き出す。中和抗体を作るB細胞、ウイルスに感染した細胞を殺傷する細胞傷害性T細胞が主に働いて、ウイルスを排除する。それと同時に再感染に対する防御と免疫記憶が獲得され、次に同じウイルスに罹患した時には、その免疫記憶が働いて抗体がすぐにできることになる。

COVID-19に限らず、感染の成立や発症の有無には、一般的にその人の免疫能が大きく関与している。体にウイルスが侵入しても全ての人が病気になるとは限らず、その理由は個人の免疫能と関係している。

免疫とは、免疫能が低下した場合は、ウイルス、細菌などの病原体による感染症や悪性腫瘍の発症に関係し、反対に免疫能が高まりすぎると、アレルギー疾患や自己免疫疾患などの発症にむすびつく。言い換えれば、免疫能の調整が全ての疾患を制御していると言っても過言ではない。

COVID-19においても一般的なウイルス感染、特にインフルエンザ感染でみられるものと類似した免疫反応がおきていることがすでに確認されている1)。このことは、これまでのインフルエンザ感染やSARS(急性呼吸窮迫症候群)、MERS(中東呼吸器症候群)で得た知見をCOVID-19に応用していくことが可能であることを示している。

COVID-19では「基礎疾患」を有する高齢者の死亡率はなぜが高いのか

COVID-19では「基礎疾患」を有する高齢者の死亡率が高いと言われている。この背景として、加齢に伴い免疫系が老化することにより、高齢者は感染にかかりやすく、慢性炎症に陥りやすくなる2)。このような状態はinflammaging(加齢に伴う慢性炎症)と呼ばれている。このほかに、「基礎疾患」を有する高齢者は酸化ストレスが亢進した状態にあると考えられ、酸化ストレスが亢進すると免疫老化(immunosenescence)が促進し、免疫能が低下してくる3)。このような状況下では感染初期に免疫応答が適切に働かないために、ウイルス排除がうまくいかず、重症化に繋がると考えられる。

免疫能を保つタンパク質

我々は食べるもので自分の体を支え、免疫能もやはり食べるもので支えている。低栄養で筋肉が減少している人は、感染症に対する免疫能が低下している(Barazzoni R, 2020)。しかも、この免疫能の低下は、生体内のタンパク量の減少と特に関係している。

健常時の身体のタンパク質を100%として、このタンパク質が徐々に喪失すると、最初に筋肉量の減少(骨格筋・心筋・平滑筋)、次に内臓タンパクの減少(アルブミンなど)、そして免疫能の障害(リンパ球・多核白血球・抗体など)などがおこってくる。身体のタンパク質が70%まで低下すると、臓器障害をきたし死に至ることも知られている(大柳治正, 2000)。免疫能を保つためには、サルコペニア(筋肉減少)にならないように、日頃からタンパク質を十分に摂ることが必要である。サプリメントとしては、タンパク崩壊の抑制に働くグルタミンやタンパク合成を促進する分岐鎖アミノ酸などを多く含むものが勧められる。

微量栄養素の欠乏は免疫能を障害する

(1)ビタミンA

ビタミンAは免疫能の維持に関係し、リンパ球形成、サイトカイン発現、抗体産生などに作用することが示されている(Semba RD, 1999)。2019年の米国からの報告によると、インフルエンザ予防接種を受けた小児においてビタミンA(2万IU)+ビタミンD(2000IU)のサプリメント投与群では、予防接種に対する免疫反応の有意な亢進が認められた(Patel N, 2019)。タンザニアで行われたランダム化比較試験(RCT)では、ビタミンAサプリメント投与により、マラリア、肺疾患、HIVといった致死的疾患における合併症のリスク低減効果が認められた(Villamor E, 2002)。したがってビタミンA補充は免疫能を増強してCOVID-19に対する感染リスクを低減する可能性がある。

(2)亜鉛

亜鉛は、自然免疫と獲得免疫の両方の維持に重要なミネラルである(Maares M, 2016)。獲得免疫は図1の右上の抗体を中心とした液性免疫と、右下の細胞傷害性T細胞を主力とする細胞性免疫に分けられるが、亜鉛不足は液性免疫および細胞性免疫の両方の機能障害を生じ、感染性疾患への罹患リスクを高める(Tuerk MJ, 2009)。2017年のコクランレビューでは、小児の麻疹に対する亜鉛サプリメントの有用性が報告されている(Awotiwon AA, 2017)。この他に、細胞内の亜鉛濃度が上昇するとRNAウイルスの複製が阻害されることが知られている。したがって、亜鉛サプリメントの利用によって亜鉛が充足されれば、COVID-19の感染予防、および下痢や下気道炎といったCOVID-19の症状軽減に有用と考えられる。亜鉛のサプリメントは比較的安全性が高く、1日あたり20mgの摂取が勧められる。

(3)ビタミンC

ビタミンCについても多くの免疫能増強作用が報告されている。例えば、抗体産生の増強(Azad IS,2007)、貪食作用の増大(Bozonet SM, 2015)、インターフェロン産生の増加(Kim H,2016)、Tリンパ球の増殖(Molina N, 2014)と成熟の助長(Manning J, 2013)、Bリンパ球増殖の助長(Schwager J, 1997)、ナチュラルキラー細胞の活性化(Heuser G, 1997)、などである。

臨床的には、ビタミンC投与により感冒やインフルエンザの症状が85%軽減した(Gorton HC, 1999)、RCTで、ビタミンC (1000mg/日、2週間)投与により、プラセボ群に比べ、風邪罹患が45%少なく、罹患日数も59%少なかった(Johnston CS, 2014)、RCTで、平均80歳の高齢入院者にビタミンC(200mg/日)を投与すると、投与群で呼吸器症状のスコア(咳や痰など)は有意に低値であった(Hunt C, 1994)、などが報告されている。したがって、ビタミンCは抗酸化作用に加えて、免疫調整作用を有しており、COVID-19の感染リスクも低減するであろうと考えられる。

(4)ビタミンD

ビタミンDは免疫調整作用や抗炎症作用を有していることが知られている。これらに関するいくつかの報告を以下に列挙する。ビタミンDは各種ウイルス性呼吸器感染症に対する自然免疫系の調整において重要な働きをしている(Zdrenghea MT, 2017)。観察研究では肺炎リスクとビタミンD低値の有意な相関が見出されている(Zhou YF, 2019)。ビタミンD欠乏が急性ウイルス性呼吸器感染症への罹患リスクを高める(Monlezun DJ, 2015)。血中ビタミンD高値は急性ウイルス性呼吸器感染症リスク低下と相関。罹患率は、血中ビタミンDが38ng/mL以上では17%、38ng/mL未満では45%に達する(Sabetta JR, 2010)。インフルエンザに対するビタミンDの効果を慈恵医大グループが報告。これによるとビタミンDの1200IU/日投与でインフルエンザの発症が42%減少した4)

2018年にインフルエンザの予防及び治療におけるvitamin Dの役割に関して、自然免疫や獲得免疫における作用機序を詳述した総説が報告され、ビタミンDによるインフルエンザ感染リスク低減作用が示唆されている5)

COVID-19が世界的に流行する中、ビタミンDとCOVID-19感染に関する報告が相次いだ。COVID-19感染と平均血中ビタミンD濃度との関係をみた欧州20カ国の研究では、血中ビタミンD濃度が高ければ、COVID-19感染者数および死亡者数は少なかったと報告6)。血中ビタミンD濃度とCOVID-19の重症度との関係をみた研究では(図2)、ビタミンD濃度が30ng/mL未満ではCOVID-19は重症化するのに対して、30ng/mL以上の症例では、ほとんどが軽症で経過していると報告7)。血中ビタミンD濃度とCOVID-19感染による死亡者数との関係をみた研究では、ビタミンD濃度が30ng/mL以上であれば死亡率が低いと報告している8)。COVID-19入院患者のビタミンD濃度を測定した英国の研究では、ビタミンD濃度が50nmol/L(20ng/mL)以上であった者は、一般病棟患者では39.1%、ICU患者では19%で、ビタミンDが低値になるとコロナ感染症が重症化しやすいと報告した9)。以上から、ビタミンD濃度が低いほどCOVID-19による肺炎は重症化しやすく、死亡率が高くなる可能性がある。

図2.血中ビタミンD濃度とCOVID-19重症度との関係

図2血中ビタミンD濃度とCOVID-19重症度との関係 212名のCOVID-19患者について、血中ビタミンD濃度と重症度との関係について調べた。患者の状態によって重症度を以下の4段階に分けた。(1)Mild(軽症):肺炎症状なし、(2)Ordinary(中等症):CT画像にて肺炎像あり、(3)Severe(重症):低酸素血症あり SPO2<93%、(4)Critical(最重症):集中治療を要する呼吸不全。ビタミンD濃度が30ng/mL未満の症例では、COVID-19が重症化するのに対して、30ng/mL以上の症例では、ほとんどが軽症で経過している。

東京で開業している満尾正先生は、サプリを飲んでいない初診の患者1746名の血中ビタミンD濃度を測定。40ng/mL以上は22%で、他はそれ以下であったと報告している(満尾正. 2020)。当院は北海道帯広にあるが、ビタミンD濃度が40ng/mL以上はわずか10%であった。日照時間の長短を考慮しても、日本人の多くがビタミンD不足の可能性がある。感染予防のための至適ビタミンD濃度は40〜60 ng/mLである。100ng/mLでも特に副作用はないといわれている。ビタミンDサプリメントの摂取目安は、2000〜4000IU/日である。ビタミンD血中濃度(25-OH-VD)は自費で測定できるので気になる方は測定をおすすめする。

これまでビタミンA、C、D、亜鉛の話をしたが、その他にもビタミンE、B6、B12、セレンなども免疫能に関与しており、これらの欠乏がCOVID-19の発症や重症化に関わっているものと推察される10)。したがって、特にビタミンC、D、亜鉛の摂取量に配慮しながら、ビタミンE、B6、B12、セレンを含むマルチビタミンミネラル摂取をおすすめする。

食物繊維とプロバイオティクス

「毎日いいウンチが出ますか」と著者は患者によく聞く。それは人の腸内細菌が免疫に非常に関係しているからだ。良いウンチがでれば腸の状態は良好で免疫能も良い状態にあると、簡単に言えばそういうことになる。食物繊維は短鎖脂肪酸の産生(乳酸や酪酸)を亢進させ、生体には抗炎症的に作用している(Kaminogawa S, 2004)。日常的な食物繊維の摂取不足は、腸管粘液層の低下を引き起こし、その結果、粘膜表層の細菌叢のディスバイオーシスを引き起こし、バリア機能低下の一因となる(Desai MS, 2016)。すなわち、腸は外界と接しているので、機能の低下した腸粘膜からウイルスや細菌が体の中に侵入しやすくなる。腸の粘膜を健全に保つことは非常に大事である。

プロバイオティクスとは、「腸内細菌叢のバランスを改善することによって宿主の健康に好影響を与える生きた微生物」(Fullerによる定義、1989)で、乳酸菌やビフィズス菌が有名で、ヨーグルトとしてこれらを摂取することが多いかと思われる。乳酸菌製剤を摂ると、初期の自然免疫で働く血中インターフェロンが上昇して感染予防に効果があると報告されている(Arimori Y, 2012)。ビフィズス菌は短鎖脂肪酸として酢酸、乳酸を産生し、酢酸はウイルス感染症を抑制する。そのメカニズムは、酢酸が血中インターフェロン産生を亢進することによる(Antunes KH, 2019)。乳酸菌R-1株の12週間投与により、インフルエンザウイルスに反応するIgAという免疫グロブリンが有意に増加し、これがインフルエンザウイルスに対抗する力を持つことが報告されている(Yamamoto Y, 2019)。

朝鮮人参

先にも述べたようにインターフェロンはウイルス除去の上で極めて重要であるが、朝鮮人参にもインターフェロン産生増強作用が報告されている(Lee JS, 2014)。

国民健康・栄養調査

最後に厚労省が毎年行っている国民健康栄養調査について触れたい。2015年の調査をみると、女性では食物繊維は全世代で不足。ビタミンA、B1、B6、亜鉛も不足している。またビタミンD摂取は240IUで非常に少ない。これでは日本人女性の免疫能が健全に維持されているとは思えない。

おわりに

現時点においては、COVID-19に対してビタミン、ミネラル、食物繊維、プロバイオティクスなどが直接きくというエビデンスはないが、先に述べたようにインフルエンザなどのウイルス感染症で得た知見がCOVID-19にも応用できることが十分に考えられる。日頃から体に必要な栄養素の摂取を心がけ、免疫能を維持増強することがCOVID-19の感染予防には大事かと考えられる。

本稿に関して開示すべきCOIはない。

文献(10個以内)

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