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「Summer Seminar in 北海道然別湖」を振り返って

更年期と加齢のヘルスケア 13:303-305, 2015
セミナー集会長 北海道支部 満岡孝雄(みつおかたかお)

2014年7月19日〜21日に、学会としては初めてのサマーセミナーを北海道然別湖で開催した。その記録を残すために、開催に至る経緯と準備、セミナーの状況、総括などを記しておきたい。

2013年10月6日に東京・三田で行われた第6回カウンセラー・アドバイザー研修会の席で、理事長の小山嵩夫先生より「サマーセミナーを北海道で開催してほしい」との依頼を受けた。理事の河端恵美子先生からも「ぜひ実現してほしい」との要望を伺った。その研修会に北海道支部会員が数名参加していたので、その旨を伝え意見を聞いた。前向きに取り組もうということでその場で合意し、早速昼休みに開催日程を小山先生と相談した。急いだのには理由がある。北海道の夏は観光シーズンで繁忙期のため、良いホテルを押さえることはなかなかできない。それに加えて10月26日の学術集会で、全国の会員にサマーセミナー開催を周知したくもあった。会期を2泊3日とすると、夏で連休になるのは唯一、月曜が祝日・「海の日」となる7月19日〜21日しかない。選択の余地もなく、この日程にきまった。学術集会まであと20日しかない。案内の準備を急がなければならない。

2012年8月4日〜5日、日本抗加齢医学会・臨床研究推進委員会主催の「第3回アチエイジング医療における臨床データ報告会」を、世話人として然別湖畔で開催したことがある。この時に集会運営の know - how をある程度学ぶことができた。その時の経験を生かし、さらに工夫して良いセミナーにしたいと思った。帯広に戻った後、当該の日程でホテルが押さえられるかを確認し、10月13日に、支配人にクリニックに来てもらい、具体的な打ち合わせをした。支配人は旧知の中なので、すぐに話が通じ、50人が宿泊できる部屋と、講演会場、さらに懇親会場などを確保した。ホテルそのものの選択に迷うことはなかった。多少交通の便は悪いが、俗化しておらず、手つかずの大自然を堪能できるこのホテル以外の会場は考えられなかった。

10月26日の学術集会場で、学会事務局で準備してくれた写真入りのちらしを配布した。こうしてサマーセミナー開催は、あわただしく現実のものになった。

12月21日、上京した折に、小山先生、河端先生、事務局の山川さんと、私たち夫婦で、サマーセミナー運営について話し合いをもった。これに先立ち11月16日〜17日に北海道勉強会を開催した折、夜の懇親会時に運営方法について支部会員で相談した。その内容をまとめ事前に小山先生にお知らせしておいた。どのようにセミナーを企画するかなかなか青写真が描けないでいたが、この話し合いでやっとイメージがわいてきた。

年が明けて2014年1月8日に、サマーセミナー開催概要の第1報を、学会ホームページに掲載した。4月1日には第2報を掲載し、本州方面から来られる方は早めに航空便のチケットを手配されるようにお勧めした。羽田ー帯広の往復料金は通常では9万円ほどする。しかも間近ではチケットは手に入りにくい。早めに手配すれば割引チケットが手に入るかもしれない。5月2日に第3報を掲載し、講師、演題を含めたプログラムを公表することがやっとできた。

セミナー初日(7月19日)は、然別湖は朝から小雨で靄がかかり、湖や周辺の大自然を残念ながら見ることはできなかった。特別参加してくれた帯広のフレンチ・レストラン「ル・ボルドー」のオーナー・シェフ、加藤和彦氏が、参加者を北海道らしい料理で迎えたいと、ホテルの玄関先で「子羊の丸焼き」を実演する中、バスが到着した。揃いの黄色いティーシャツの「チーム・ナキウサギ」を着た北海道支部会員の現地スタッフが、ホテル玄関で参加者を迎え、ロビーに設けた受付で資料と部屋のキーを渡し、まずは部屋でくつろいでもらった。

セミナーの講演内容については、本誌に論文として掲載されており、また質疑応答も付記されているので、そちらを読んでいただければと思う。論文では伝わりにくい部分についてここでは述べたい。

16時からセミナー(1)のセッションを開始した。講師3番手の峯村昌子氏がメディア側の情報発信の内情を話された後に、グループに分かれ、会場の「ホテル風水」を例に、集客のための宣伝文を皆で実際に作成してみた。対象が同じでも書き手によってアピールするポイントが異なることが、作業を通じて理解できた。このようなワークショップ形式はセミナーでしかできないことを感じた。

セミナー(1)が2時間半で終わると、19時からウェルカムパーティーである。「子羊の丸焼け」もできあがり、加藤氏が手際よく解体しながら肉を小皿に小分けしていく。羊の独特の癖がまったくなく美味しい。彼が準備したもう一品は「十勝の旬の野菜の盛り合わせ」で、朝収穫された無農薬に近い新鮮な野菜を美味しくいただいた。この他にはホテル側が美味しい日本料理を出してくれた。酒は、シャンパン、ビール、ワインを準備したが、これに花を添えてくれたのが黄先生差し入れの甕だし紹興酒2甕。中国から取り寄せた名酒で、一抱えもある甕である。石灰で密封された蓋をのこぎりとカナヅチで割り、中蓋を取ると、芳醇な香りがたつ。今まで飲んだ中で最高との参加者の声で、場は盛り上がった。北海道支部会員が、ウェルカム・フラダンスを披露し、場は和やかなムードに包まれた。その後、講師紹介、自己紹介を行い、あっという間に2時間が過ぎた。この後、臨時バー『ふくろう』に移動し、情報交換会を開いた。ほぼ全員が参加してくれ、バーは人で溢れた。もともと『ふくろう』はホテルのバーであったが、利用者が少なく、最近は閉じていた。バーの備品はすべて揃っているので、カンターに現地スタッフが入って、参加者にサービスをした。22時に中締めをしたが、その後も残って議論が続いた。後で聞くと24時頃まで話に花が咲いたそうである。

セミナー2日目(7月20日)は、日置先生の「大自然の気を吸ってヨーガ」の実践ではじまった。7時20分、あいにくの小雨で、しかし昨日と違って湖や周囲の美しい山々が見える。ホテルの屋上で湖を眺めながらヨーガをやる予定でいたが、屋上に水たまりがあるために、講演会場に場を移して25分間ヨーガの実践を行った。体が硬いことを思い知った方々が多かったようだ。その後、小雨の中、傘をさして20分間「湖畔の早朝ウォーキング」に出かけた。新鮮で美味しい空気を満喫する。

朝食後、9時からセミナー(2)を開始した。講師1番手は2014年学術集会長の牧田和也先生である。昨夜遅くホテルに着かれ、午前のセミナーが済んだら東京にとんぼ返りである。講演のためにわざわざ来ていただいたわけで恐縮した。先生は今回のサマーセミナーの企画を大いに評価され、「継続できればいいですね」と言って慌ただしくホテルを後にされた。

2時間45分に及ぶセミナー(2)が終わり、午後からは自由時間である。この時間帯に outdoor activity を企画した。outdoor activity は、今回の主要なイベントであったが、意外と申し込みが少なかった。主催者のネイチャーセンターが協力してくれ、6種の activity を準備したが、結果的には「森と水辺のガイドウォーク」と「シーカヤック」に集約された。「森と水辺のガイドウォーク」には6人が参加し、原始林の中を色々な説明を受けて歩くということが新鮮で、また雨ではあったが長靴やカッパも準備してくれ、参加者は満足であった。また、「シーカヤック」には2人が参加したが、湖面からの目線で自然を眺める事ができ、これも大好評であった。また、多くの参加者は遊覧船に乗って約1時間、湖からの大自然を楽しんだ。

自由時間が終わり、夕食を済ませ、19時30分からセミナー(3)が始まった。このセッションの唯一の演者である歯科医師の別府尚司先生の講演は、世界のトップ水準の歯科医療を紹介され、現実に行われている保険診療とのギャップに、ショックを受けられた人も多かったようだ。先生に対する質疑応答はこの夜のバー『ふくろう』まで持ち越され、夜遅くまで続いた。

20時50分からは「夜の大討論会」である。峯村昌子氏を座長に、小山、河端、黄、の各先生に私が加わり、「わが国の医療で大幅に欠けている健康増進を実現するにはどうしたらよいか」をテーマに、フロアから加わって、文字通り大討論会となった。その余韻のまま、バー『ふくろう』に移動し、懇親会も大いに盛り上がった。午前2時まで議論していたと後で聞いた。皆さんのバイタリティーには脱帽。

セミナー3日目(7月21日)は、朝から晴れ、美しい湖を見ることができた。朝食後、荷造りをしチェックアウト後に、9時よりセミナー(4)を開始した。2時間50分にわたる最後のセッションが終わり、小山先生の総括でサマーセミナーはすべて終了した。

12時にホテルから十勝帯広空港とJR新得駅にバスが出る。昼食の弁当を手渡して参加者をホテル前で見送った。

本セミナーを準備するにあたり、工夫したことをいくつか付け加える。セミナー会場は、スクリーンに向かってUの字型に机をならべ、対面方式に設定した。学校方式では参加者の顔が見えないので、どうしても親近感がわかない。本セミナーでは、質疑応答のために質問用紙を準備した。挙手して質問することにプレッシャーを感じるという北海道支部会員からの提案があったからだ。この質問用紙は好評であった。ただ講演直後にも口頭でのディスカッションがあった方が良いという意見もあり、途中で両方を併用するやり方にかえた。時間内に答えられないほどの質問が用紙で寄せられた。今後も両方の併用が望ましいと思われた。

今回の参加者は30人であった。うち北海道支部会員が11人、満岡内科から手伝いの2人、そして特別参加のル・ボルドーの加藤氏を含め、現地スタッフは14人であった。一方、道外からの参加者は16人で、うち講師が9人、一般参加者が7人であった。50人を目標にしていたので、やや残念であった。セミナーの宣伝が学会のホームページや東京での研修会に限られた。会員に対して一括メールができるようなシステムが必要と感じた。また、会費は宿泊+食事代で6万円と2泊3日のセミナーとしては安く設定したが、道外からの交通費が、先に述べたように羽田—帯広の正規往復運賃が9万円と参加費よりも高く、これがネックになったかもしれない。ツアーを組むなども一つの解決法かと思われる。

当初、一部屋を2人で使用する前提で部屋割りを考えていたが、参加者数が最終的には30人であったため、一部屋を1人で使用することが可能となった。また、一部屋1人使用でも、どうにか収支をトントンで抑える事ができた。もちろん、北海道支部会員のボランティアとしての働きがあってのことである。今回のセミナー運営費は、約160万円(すべて会費)であった。応募時から部屋の一人使用を希望した人も数人おり、ゆったり過ごしてもらうためにも一部屋一人使用が原則かと思われる。

現地スタッフ以外の参加者に、セミナー終了後にアンケート調査を行った。その結果を表に示すが、概ね高い評価をいただいた。また、同様な企画があれば、参加されるかという問いには1名を除き、93%の方が「はい」と答えてくれた。

最後に、本セミナーで講演していただいた先生方には、手弁当で講師を引き受けていただいた。理事長の小山先生には、いろいろと相談にのっていただいた。また、北海道支部会員は現地スタッフとして一致団結して運営に当ってくれた。皆様の学会に対する熱い思いと奉仕の精神なくしては、本セミナーは成功しなかったと思う。感謝です。

表-評価アンケートの結果