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院内感染対策
「インフルエンザ・ノロウイルスについて」
2013.01.24 山岡美智恵
インフルエンザ感染予防について
1.インフルエンザの基本
- 流行は11月上旬頃より散発的に発生し、1月下旬2月に患者数が増加。
4月上旬頃までに終息する。 - ウイルスは3種類(A.B.C)大きな流行になるのはA.B型。2009年に大流行した。
新型インフルエンザは、現在季節性インフルエンザ(A)として取り扱われる。
一般的にA型から流行し、終息期にB型が流行する。
ウイルスの違いで症状等に大きな違いはないとされている。 - 主な感染経路は、飛沫感染と接触感染。
- 潜伏期間は通常1~3日。発症直前から発病後3日程度までが感染力が特に強い。
- 典型的な症状は、急激な発熱で発症、38 ~39 ℃ あるいはそれ以上に達する。
頭 痛、腰痛、筋肉痛、関節痛、全身倦怠感などの全身症状が強い。
咽頭痛、咳などの呼吸症状がある。
子供ではまれに急性脳症を、高齢者や免疫力低下の人は肺炎を伴い重症化することもある。 - 診断は迅速診断用キットの使用が簡易。
又、臨床症状では呼吸器症状を伴う急性熱性症状が重要。
2.インフルエンザの予防と治療について
- 予防は流行前のワクチン投与(予防効果は接種2週後から5ヶ月程度)。
ワクチンは感染後に発病する可能性を低減させる効果と、インフルエンザにかかった場合の重症化防止に有効。12月中旬までにワクチン接種を終えることが望ましい - 日頃からの十分な休養とバランスの取れた食事の摂取。
- 咳エチケット。(咳やくしゃみを他人に向けて発しない。咳が出るときはマスク着用。手のひらで咳やくしゃみを受け止めた時はすぐに手洗い。)
感染者がマスクをする方が感染を仰える効果は高い。
しかし、可能な場合は皆がマスクをすることが感染対策としては効果的である。
※1回のくしゃみで約200万個、咳で10万個のウイルスが飛散するといわれている。
比較的大きな粒子はおよそ1~1.5メートルの距離であれば、直接に周囲の人の呼吸器に侵入して感染が起きる。 - 外出時のマスク着用。人混みや外出を避ける。
アルコール製剤による手指消毒も効果が高いためアルコール製剤による手指衛生を保つ。 - 湿度の保持(50 ~ 60%)乾燥するとのどの粘膜の防御機能が低下する。
また、ウイルスが散飛することを防止できる。また、適時換気の実施。 - 疑わしい場合は、早めに医療機関を受診する。
- 安静にして休養を十分とる。また、水分を十分に補給する。
- 小児、未成年者ではインフルエンザの罹患により異常行動を起こす恐れがあるので自宅にて療養する場合、すくなくとも2日は一人にならないように配慮する。
- 治療は安静にして休養をとることや対症療法のほか、抗インフルエンザウイルス薬の投与がある。 抗インフルエンザウイルス薬は48時間以内に投与を開始すると効果が高い。(発熱期間が1~2日間短縮され、ウイルス排出量も減少)
現在使われている主な薬は、A.B両型に有効なタミフル(内服)、リレンザ(粉末吸入)、イナビル(粉末吸入)、ラピアクタ(点滴投与)。A型に有効なシンメトレル(内服)がある。
タミフル服用後に異常行動の発現のおそれがあると報道されたことがあったが、インフルエンザ自体でも異常行動がみられる場合があり、タミフルと異常行動の因果関係は明確には結論は出されていない。しかし、現在10歳以上の未成年者にはハイリスク患者を除いてはタミフルの投薬は基本控えられている。 - インフルエンザは重症化すると脳症を起こすことがある。そのため、脳症を重症化する副作用のある薬剤の使用にも注意が必要。ボルタレン座薬、ポンタール、バファリンなどがそれに当たる。安易な薬剤使用は避けるべきであり、医師の診断のもと処方された薬剤を使用することが妥当である。
- ウイルスの排出は、インフルエンザ発症前と発症後3~7日。排出されるウイルス量は解熱とともに減少するが、解熱後もウイルスは排出されている。学校保健安全法では「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日(幼児3日)を経過するまで」を出席停止期間としている。
3.インフエンザワクチンの接種について
- ワクチンの最も大きな効果は重症化を予防すること。
- ワクチンは接種すれば絶対に罹患しないというものではない。ある程度の発病を阻止する効果と、またたとえかかっても症状が重くなることを防いでくれる。
- ワクチンの副作用は、接種した部位の発赤、腫脹、疼痛などがあり接種を受けた人の10~20%に起こる。
しかしどちらも2~3日で改善する - ワクチン接種後まれに、ショック、アナフィラキシー様症状(発疹、じんましん、発赤、掻痒感、呼吸困難など)が起こることがある。
これらの症状は、接種後比較的すぐに起こることが多いため、接種後30分は医療機関内で安静にしてもらう。 - インフルエンザワクチンは不活化ワクチンのため、インフルエンザを発症することはない。
- ワクチン接種により健康被害が生じた場合は、独立行政法人医薬品医療機器総合機構法による医薬品副作用被害救済制度または、生物由来製品感染等被害救済制度の対象になる
ノロウイルスについて
1.ノロウイルスとは
- ノロウイルスは貝類(主にかき、あさり、ハマグリと言った二枚貝)に蓄積されていて、生で食べ始める11月頃から流行し始める。ピークは1~2月。
人だけに感染して、人の小腸で増殖するウイルス。
このウイルスに感染することで感染性胃腸炎、食中毒を起こす。 - 一般の食中毒菌(サルモネア菌など)は数十万~数百万個が体内に入らないと感染、発症しないがノロウイルスは100個以下でも感染、発症する。感染力がとても強い
2.感染経路
- 経口感染がほとんど。ウイルスに汚染された貝などを生、あるいは十分に加熱しないで食べた際に感染する。
- 食品を扱う人、調理する人の手指にウイルスが付着していてそれを介して感染する。
- 感染者の便、嘔吐物からの感染。便、嘔吐物は直接触れなくとも、それらを開放状態で放置することで、ウイルスが浮遊して感染する。
3.症状
- 潜伏期間は24~48時間。
- 吐き気、嘔吐、下痢、腹痛。発熱は軽度。多くは1~2日程度で回復する。後遺症もない。また、感染しても自覚症状がない時もあり、軽い風邪症状程度で済む場合もある。
- 症状が回復しても1週間程度、長いときで1ヶ月ほどウイルスを含む便を排泄することがあるため注意が必要。
- 免疫力の弱い人(高齢者、幼児など)は重症になったり、死亡するケースもある。
4.予防と対策
- 食品は出来るだけ加熱処理する。(85℃ 1分)
- まな板、包丁、へら、ふきん、食器、タオルなどは熱湯(85℃以上)で1分以上の加熱が有効。
- 調理器具等は洗剤などを使用し洗浄した後、次亜塩酸ナトリウム(市販の家庭用塩素系漂白剤)で浸すように拭くことでウイルスを死活化できる
浸すように拭くことでウイルスを死活化できる。
器具消毒、汚物処理用:塩素系漂白剤10mlを1Lの水で薄めたもの。
汚物処理部品の消毒:塩素系漂白剤10mlを 500mlの水で薄めたもの。 - 便、嘔吐物の処理は、素手でしない。使い捨てマスクと手袋を着用する。
場合によりガウンなどの着用も必要。 - ノロウイルスは、乾燥すると空気中に浮遊するため、汚物や拭き取りに使ったペーパータオルなどは放置、乾燥させない。ビニール袋に入れ処理する。
- 拭き取りに使用したペーパ-、タオル等は家庭等塩素系漂白剤で(上記%にて)消毒し、ビニール袋に入れて処理する。
- 便や吐物が付着した床等も塩素系漂白剤で消毒する。じゅうたん等は85℃1分以上、スチームアイロンを当てると良い。
- アルコール消毒では効果がないため、感染防止には手洗いが最も重要。
- 手を軽く水洗いしてから薬用石けんを良く泡立てて、手のひらや手の甲をすり合わせ手洗う。
- 手のひらに爪を押しつけてひっかくように洗う(写真1)。
(爪を洗うとと同時に手のひらのしわの汚れをおとす効果もある。爪が長いとウイルスが爪の間に入り込んでしまうので短く切っておく。) - 両手の指を互いに重ね合わせ、こすり洗う(写真2)。
- 親指の周囲は、反対側の手でねじるようにして洗う(写真3)。
- 手首は反対側の手で握り、手首を回して洗う(写真4)。
- しっかり水洗いして完了。(石けんを泡立てる、最後の水洗いを除いて、手洗いの正味時間30秒が目安)
- 手拭き用のタオルは家族間で共有しない。ペーパータオルの使用が望ましい。
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