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論文紹介LUCUBRATIONS

長寿ホルモンDHEA補充でNext Stageを元気に楽しもう

更年期と加齢のヘルスケアVol.24-2

Enjoy the Next Stage with Longevity Hormone DHEA Supplementation
更年期と加齢のヘルスケア Vol.24, No. 2, pp.43-48, 2026(令和8年1月)

満岡 孝雄(医療法人社団 満岡内科循環器クリニック)
Takao Mitsuoka MD. PhD.
Mituoka Internal Mediscine & Cardiocascular Clinic

閉経後は卵巣からのエストロゲン分泌が停止し、副腎から分泌されるDHEA(dehydroepiandrosterone)がエストロゲンの主な供給源となる。しかし、このDHEA分泌も加齢に伴って低下し、閉経期にはピーク時の約半分にまで減少する。DHEAは弱いアンドロゲン作用を有し、変換されたテストステロンやエストロゲンによるホルモン作用に加えて、それ自体が免疫調節、代謝改善、血管内皮機能の維持、神経機能保護、抗炎症作用など多面的な生理活性を持つことが知られている。ボルチモア長期縦断研究や田主丸研究では、血中DHEA-S高値が長寿および健康寿命延伸と強く関連することが報告されており、いわゆる「長寿ホルモン」として注目されてきた。DHEA補充は、骨密度の維持、皮膚の保湿や張り、皮脂分泌の改善、内臓脂肪の減少、メタボリックシンドロームの予防・改善に寄与する。また、睡眠の質や気分、活力、ストレス対処などwell-being全般の向上効果も認められている。さらに軽度認知機能障害例では記憶機能の改善が報告されており、認知予防の可能性も期待されている。性機能面では膣分泌増加や膣上皮厚・色調改善、性交痛や膣乾燥の軽減が示され、性生活の質の改善にも寄与する。

2016年に米国食品医薬品局(Food and Drug Administration:FDA)で、閉経関連尿路性器症候群(Genitourinary Syndrome of Menopause:GSM)治療薬としてDHEA膣剤(Intrarosa®)が承認され、欧米で広く臨床使用されているが、日本では未承認である。DHEA補充療法は、加齢期女性のQOL向上と健康寿命延伸の双方に資する新たな戦略として注目されている。

キーワード
DHEA(デヒドロエピアンドロステロン)、閉経(Menopause)、長寿ホルモン(Longevity hormone)、健康寿命(Healthy life expectancy)、ホルモン補充療法(Hormone Replacement Therapy:HRT)

はじめに

日本は世界でも類を見ない超高齢社会に突入している。総人口の約30%が65歳以上となり、平均寿命は女性87歳、男性81歳を超える。日本人女性の平均閉経年齢は50歳前後であることから、閉経後の人生は30~40年にも及ぶ計算となる。閉経は単なる月経の停止ではなく、ホルモン環境の劇的な変化を意味し、加齢と重なってさまざまな健康課題をもたらす。閉経後の女性は骨粗鬆症、心血管疾患、認知症、筋力低下、皮膚や粘膜の萎縮、膣炎や尿失禁、QOL低下など、複数の問題に直面する。これらは女性の健康寿命に直接的に影響し、医療費・介護費用にも反映される。WHOは健康寿命の延伸を21世紀の重要な公衆衛生課題として位置づけており、閉経後女性の健康管理はその重要な柱である。従来の治療の中核を担ってきたのはホルモン補充療法(Hormone Replacement Therapy:HRT)であるが、リスク・ベネフィットの観点から長期使用には制限もある。そのなかで近年注目を集めているのが、副腎由来のDHEA(dehydroepiandrosterone)補充である。DHEAは生体内でエストロゲン・テストステロンの前駆体として機能するだけでなく、神経ステロイドとしても独自の作用を持ち、アンチエイジング医学の文脈でも「長寿ホルモン」とも呼ばれている。

1.閉経によるホルモン変化と加齢の影響

卵巣機能は加齢とともに低下し、卵子数は胎児期の約600万個から出生時200万個、思春期20万個へと減少し、閉経時にはほぼ消失する。閉経により卵巣からのエストロゲン、プロゲステロン、DHEAの産生は停止する一方で、テストステロンの分泌は閉経後10年以上続き、体内テストステロンの約半分を供給している1) 2)。自然閉経ではこのテストステロンが残存するのに対し、両側卵巣摘出術後(外科的閉経)ではテストステロン分泌も失われるため、性欲低下、倦怠感、抑うつ、筋力低下、骨量減少などの症状が顕著となるケースも多い。

閉経後のエストロゲン減少に加え、副腎からのDHEA分泌も加齢とともに減少し、骨量低下、筋力低下、脂質異常、血管機能障害、皮膚・膣粘膜萎縮など、多彩な加齢現象が加速する。さらに心理的にも意欲の低下、抑うつ傾向、集中力低下などを呈することがある。こうした内分泌的な変化は、閉経期を単なる生理的移行ではなく「内分泌転換期」として捉える必要性を示唆している。

2.HRTの役割とその限界

HRTは、更年期障害に対する最も確立された治療法の一つであり、血管運動症状や膣・尿路萎縮症状の改善、骨量減少の抑制などに有効である。Guyuronらの双子研究では、長期HRT実施者は皮膚老化が抑制され、見た目の若さが保たれていた3)。WHI(Women's Health Initiative)試験(2002)はHRTの安全性に大きな影響を与えた研究であり、エストロゲン+プロゲステン併用群における乳癌・静脈血栓症・脳卒中リスクの上昇が報告された。しかし後年、サブグループ解析により閉経早期(60歳未満)でのHRT開始では心血管保護効果が得られる可能性が示唆され、ELITE試験では閉経10年以内のHRT開始群で頸動脈内膜中膜肥厚進展が抑制されることが明らかとなった。DOPS試験では心血管イベントの抑制効果が報告され、HRTの適応・タイミング・投与法によるリスクベネフィットの違いが注目されている。一方、乳癌リスク・血栓症リスク・長期安全性の懸念が残ることから、すべての閉経後女性にHRTを適用することは現実的ではない。この限界を補う新たな治療戦略の一つとして、DHEA補充療法が注目されている。

3.DHEAの産生経路と生理学的役割

DHEAは副腎皮質網状層から分泌される体内で最も豊富なステロイドホルモンの一つである。

図1は副腎で作られるDHEAの産生経路を示す。コレステロールを原料として、プレグネノロンを経てDHEAが作られる。DHEAとDHEA-Sは相互に変換し、血液中では99%が硫酸塩のDHEA-Sとして存在する。硫酸塩に変わることで半減期がDHEAの数時間から14時間と長くなり、血液濃度が安定する。体内のDHEAを知るには、血清DHEA-Sを測定する。

図1.DHEAからテストステロン・エストラジオールへの変換経路

図1DHEAからテストステロン・エストラジオールへの変換経路 コレステロールを原料として、DHEAは作られる。プレグネノロンからDHEAに変わる。DHEAとDHEA-Sは相互に変換し、血液中では99%が硫酸塩のDHEA-Sとして存在している。硫酸塩に変わることで半減期がDHEAの数時間から14時間と長くなり、血液濃度が安定する。体内のDHEAを知るには、血清DHEA-Sを測定する。

図2に示すように、血液中のDHEA-Sは、末梢組織細胞に取り込まれてDHEAに戻り、テストステロンへ変換され、その後酵素アロマターゼによりエストラジオールに変わる。エストラジオールは核内のエストロゲン・レセプターに結合して、その作用を発揮する。その後、エストラジオールは細胞内で代謝され、不活性化されて細胞外に放出される。したがって、細胞内でDHEAから変換された性ホルモンは全身に影響を与えない。

図2.末梢組織におけるDHEAから性ステロイドへの変換

図2末梢組織におけるDHEAから性ステロイドへの変換 血液中のDHEA-Sは、末梢組織細胞に取り込まれてDHEAに戻り、テストステロンへ変換され、その後酵素アロマターゼによりエストラジオールに変わる。エストラジオールは核内のエストロゲン・レセプターに結合して、その作用を発揮する。その後、エストラジオールは細胞内で代謝され、不活性化されて細胞外に放出される。したがって、細胞内でDHEAから変換された性ホルモンは全身に影響を与えない。

図3には、加齢に伴う血清DHEA-S濃度の変化を示している。横軸に年齢、縦軸にDHEA-Sの濃度を示している。DHEA-Sは、男性よりも女性の方が低い血中濃度を示す。胎児期には100から200 μg/dLと高いが、出生後、急速に低下して思春期直前まで低いままで、10歳前後で副腎でのDHEA産生が増加し、それに連れてDHEA-S濃度も上昇し始める。思春期の初期にはDHEA作用で男女共に陰毛・腋毛の出現をみる。20から30歳でDHEA-Sはピークに達し、その後低下し始め、閉経期にはピーク時の半分ほどに、さらに70歳ではピーク時の20%まで低下する。

図3.加齢に伴う血清DHEA-S濃度の変化(男女別)

図3加齢に伴う血清DHEA-S濃度の変化(男女別) これは加齢に伴う血清DHEA-S濃度の変化を示している。横軸に年齢、縦軸にDHEA-S濃度を示している。DHEA-Sは、男性よりも女性の方が低い血中濃度を示している。胎児期には100から200 μg/dLと高いが、出生後急速に低下して思春期直前まで低いままである。10歳前後で副腎でのDHEA産生が増加し、それに連れてDHEA-S濃度も上昇し始める。思春期の初期にはDHEA作用で男女共に陰毛・腋毛の出現を見る。20から30歳でDHEA-Sは最高レベルに達し、その後低下し始め、閉経期にはピーク時の半分ほどに、さらに70歳ではピーク時の20%まで低下する。

閉経後女性では卵巣由来のエストロゲンが消失するため、副腎由来のDHEAが唯一の内因性エストロゲン前駆体となる。DHEAはテストステロンの1/10~1/100のアンドロゲン活性しか持たないが、DHEA自体にも抗炎症・免疫調整・抗骨吸収・抗動脈硬化作用があることが報告されている4)。またDHEAは神経ステロイドとして中枢神経系でも合成され、認知機能、意欲、情動制御に関与することが知られている4) 5) 6) 7)。

4.活力(やる気)とドーパミン神経系との関連

加齢とともに「やる気」や意欲が低下する背景には、大脳辺縁系および報酬系に関わるドーパミン神経活動の低下がある。ドーパミン神経系にはアンドロゲン・エストロゲン受容体が豊富に発現しており、DHEAから変換されたステロイドホルモンがこれらを介してドーパミン放出を促進し、報酬系を活性化することが知られている8)。DHEAの低下はこの神経回路に影響を及ぼし、意欲低下・抑うつ・認知機能障害といった症状に関連する可能性がある。

5.女性のアンドロゲン欠乏症候群と診断

Princeton Conference Consensus(2002)では、女性のアンドロゲン欠乏症候群が提唱された。主症状として、生きる意味の減退、慢性的な倦怠感、性機能低下(性的意欲/興奮障害)が挙げられ、これらの症状はHRTでも改善せず、総テストステロン値が生殖年齢女性の4分の1まで減少している9)。

図4には当院でアンチエイジングドックを受けた女性の総テストステロン値を示した。総テストステロン値0.3ng/ml以下は低いと考えられるが、閉経後の多くの高齢女性は総テストステロン値が低値である。

図4.当院でアンチエイジングドックを受けた女性の総テストステロン値

図4当院でアンチエイジングドックを受けた女性の総テストステロン値 横軸に年齢を、グラフ軸に総テストステロン値を示す。総テストステロン値が0.3ng/ml以下は低いと考えられるが、閉経後の多くの高齢女性は総テストステロン値が低値である。

閉経後女性ではアンドロゲン低下による筋力・骨密度の減少、QOLの低下がみられ、HRTのみでは十分な改善が得られない症例も少なくない。このような症例でDHEA補充は有力な選択肢となり得る。

6.DHEAと長寿・健康寿命

DHEAは「長寿ホルモン」とも呼ばれるが、先に示したように加齢とともに低下する。ボルチモア長期縦断研究では、DHEA-Sが高値の群で長寿傾向が認められた10)。また、日本の福岡県田主丸町で行われた27年間の追跡研究でも、男性においてDHEA-Sが長寿予測因子となることが報告された11)。DHEAの抗炎症・抗酸化・代謝調整作用が心血管疾患やフレイルの予防に寄与している可能性がある。

7.GSMに対するDHEA膣剤の臨床応用

閉経関連尿路性器症候群(Genitourinary Syndrome of Menopause:GSM)は、膣乾燥、性交痛、頻尿、排尿障害などを特徴とし、多くの閉経後女性が経験する。2016年に米国FDAが承認したDHEA膣剤(Intrarosa® 6.5 mg, prasterone)は、膣上皮の成熟、膣pHの正常化、性交痛や性機能の改善をもたらした12) 13) 14) 15) 。12か月投与でも子宮内膜や血中ホルモン濃度に有意な変化はなく、安全性も確認されている。欧州やカナダでも承認されているが、日本では未承認であり、今後の展開が期待される。

8.DHEAと神経機能・認知症予防

DHEAは中枢神経系でも合成される神経ステロイドであり、脳内濃度は末梢血中の6~8倍に達するとの報告がある5)。DHEAは神経可塑性、抗炎症、抗酸化、抗アポトーシス作用を介して神経保護的に働き、認知機能や気分に影響を与えるとされている6) 7)。うつ病や不安障害に対するDHEA補充の効果も検討されており、認知症予防への応用が期待されている。日本でも軽度認知障害患者へのDHEA投与で記憶機能改善効果が報告されている16)。

9.DHEA補充療法の実際と安全性

DHEA補充は経口、経膣、経皮など多様な投与経路がある。経口投与では全身的効果が得られる一方、初回通過効果による血中濃度変動がある。経膣投与は局所作用が主体で全身曝露が少なく、安全性が高い。経皮投与は安定した血中濃度を得やすい利点がある。副作用として多毛、脂性肌、軽度のにきびなどがあるが、重篤な有害事象はまれである。ホルモン依存性腫瘍の既往がある場合には禁忌である。

当院ではDHEA補充を3年以上(3~9年、平均6年)継続している10例(男性4名、女性6名)を経験している。図5にはこれら10例についてDHEA補充前後のDHEA-S濃度を示した。DHEA補充でDHEA-Sは有意に増加した。

図5.DHEA補充前後のDHEA-S濃度

図5DHEA補充前後のDHEA-S濃度 3年以上(3~9年、平均6年)DHEA補充(25mg/日)を続けている10名(男性4名、女性6名)についてDHEA補充前後のDHEA-S濃度を示した。DHEA補充でDHEA-Sは有意に増加した。

図6には、女性6名のDHEA補充前後の総テストステロン値を示した。DHEA補充で女性の総テストステロン値は有意に増加したが、一部症例で変化が乏しい例もみられ、個体差や末梢変換能の差が関与する可能性が考えられる。DHEA補充を行なっている女性は大変元気であるという印象があるが、総テストステロン値の高値が元気に関係しているのではないかと推測している。

DHEAは米国ではサプリメントとして容易に入手可能であるが、製品間の含有量・品質のばらつきが課題とされる。日本では医師の処方が必要であり、適正使用が求められる。

図6.当院でDHEA補充を行なった女性6名のDHEA補充前後の総テストステロン値

図6当院でDHEA補充を行なった女性6名のDHEA補充前後の総テストステロン値 3年以上(平均6年)DHEA補充(25mg/日)を続けている女性6名についてDHEA補充前後の総テストステロン値を示した。DHEA補充で女性の総テストステロン値は有意に増加する。DHEA補充を行なっている女性は大変元気であるという印象があるが、総テストステロン値の高値が元気に関係しているのではないかと推測している。

おわりに

DHEA補充は閉経後女性の内分泌環境を補完し、骨・血管・神経・免疫・皮膚・性機能など多領域にわたり加齢関連症状の改善が期待できる。HRTとの併用や代替として、より包括的なアンチエイジング医療の一翼を担う可能性がある。今後は国内での臨床試験の蓄積、安全性・有効性データの整理、ガイドラインへの組み込みが求められる。また、DHEAは健康寿命延伸・フレイル予防・認知症予防の戦略的介入としても意義が大きく、公衆衛生的視点からの研究も重要である。

本稿は第22回日本更年期と加齢のヘルスケア学会学術集会の会長講演内容をまとめたものである。DHEAに関する詳しい情報を知りたい方は筆者が最近執筆した総説を参照していただきたい17) 18) 19) 20) 21)。

文献

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  21. 満岡孝雄. 【みんなで診る更年期からの女性の健康. 多彩なアプローチを知ろう】治療編:実施するうえでのポイント. 男性ホルモン(DHEA). 臨婦産79 : 140-151, 2025.