肩こりのセルフケア

2023.06.26

現代では国民病ともいわれる「肩こり」。放置しておくと頭痛やめまいなど、さらなる不調の原因にもなりかねません。今回は「肩こりの予防」について紹介します。

肩こりの原因とは

医学専門書である医学大辞典によると「肩こりとは原因を問わず、僧帽筋を中心とした肩甲帯筋群のうっ血・浮腫により生じた同部のこり、はり、こわばり、重圧感、痛みなどの総称」とされています。原因としては、猫背や前かがみなど姿勢が悪さ、運動不足、精神的なストレス、血行不良、冷え、加齢などが上げられ、国民生活基礎調査によると、日本人の10人に1人が肩こりを自覚しているともいわれています。

肩こりのセルフケアの方法

肩こりは、マッサージや体操などの運動、栄養素の補給などのセルフケアによっても症状の軽減が期待できます。

運動編

男子大学生を対象にコントロール（CON）群、肩すくめ運動（SED）群^※、自転車エルゴメーター（EEC）群の3群に分け、運動様式の違いが僧帽筋ヘモグロビン動態、皮膚温、筋硬度、自覚的感覚に及ぼす影響について検討しました。

※両肩をすくめるように肩甲骨を挙上させ、肩を挙げたまま5秒程度保持したら降ろす。この動作を繰り返す。

結果、皮膚温について、肩すくめ運動（SED）群では運動によりCON群と比べ高値を示し、筋硬度や自覚的感覚についてはSED群で有意に高値を示しました。また、ヘモグロビン動態はSED、EEC群でCON群と比べて、動脈血の流入量が増加しました。この結果は肩部の運動だけでなく下肢の運動でも肩こりの改善に影響を与える可能性を示唆しています。（中川雅智et al.; 千葉体育学研究,36,1-8（2014））

入浴中の運動も肩こりの改善につながるといわれています。肩こりを自覚している成人女性を対象に運動群と入浴併用運動群の2群に分け検討した結果、運動群では30分後に筋硬度が有意に低下したのに対し、入浴併用運動群では時間の経過とともに筋硬度が有意に低下しました。運動のみでも筋硬度の低下はもたらされていることから、肩こり改善に有効ですが、入浴を併用することで早期から筋硬度が低下し、肩こりの改善に、より効果的であることが示唆されました。（吉永砂織et al.; 日健医誌28（4）:402-406,2019）

栄養素編

ビタミンE：強い抗酸化性作用があり、赤血球の溶血の防止、血流を正常に保つことに関与しています。ビタミンEが不足すると、神経や筋障害の症状がみられることがあります。また、血行も悪くなり、冷え性や頭痛、肩こりなどを起こしやすくなります。

ビタミンB群：代謝やエネルギーの産生を補助することで有名です。筋肉や神経の健康にも必要な栄養素であり、バランスよく摂取することで肩こりの改善につながると考えられています。

ビタミンC：皮膚や軟骨などを構成するコラーゲン生成に必須です。抗酸化物質としても重要でストレスや疲労をやわらげる効果も期待できます。

また、ビタミンCの不足期間が永くなると筋肉を構成する筋線維が細くなり、筋肉の重量が減少すると言われています。筋肉量が少ないと血液をからだに巡らせるポンプ機能が弱くなり、肩こりの原因にもなります。ビタミンCは不足しないよう補給するようにしましょう。

たんぱく質：筋肉や臓器などからだを構成する要素として非常に重要なものです。たんぱく質不足により、筋肉量が低下し血行不良につながるため、良質のたんぱく質を意識して摂取しましょう。

【豆知識1】良質なたんぱく質って何?

たんぱく質を多く含む食品の中でも、体内で合成することのできない「必須アミノ酸」をバランスよく摂ることのできるものが良質なたんぱく質といわれます。必須アミノ酸の割合を示す指標として「アミノ酸スコア」があり、肉、魚、卵、大豆、乳類で高いといわれています。また、アミノ酸スコアが低い食品でも、高い食品と組み合わせることでバランスを取ることが可能です。