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亜鉛の体内動態

2016.10.18

近年、ミネラル濃度を簡易的に測定する機器が登場し、亜鉛不足の測定に注目が集まっています。

今回は亜鉛の体内吸収・分布・排泄等に関する情報をまとめました。

亜鉛に関する基本情報

ヒトの身体には30種類以上の微量元素と呼ばれるミネラルが存在しています。

微量元素の中でも亜鉛は、鉄に次いで多く体内に存在し、タンパク質の構造因子、酵素の補因子、シグナル因子として生体調節上非常に重要な役割を果たしています。

体内吸収・分布・排泄

成人の亜鉛の1日必要量は10~15mgで、妊産婦および授乳期には1日20~25mgの摂取が必要です。

体内への吸収

経口摂取された亜鉛は、主に十二指腸で吸収されますが、 欠乏状態ではより多く吸収され、80~90%が吸収されます。一方、充足している状態では吸収率は10~20%に低下するといわれています。

亜鉛には、鉄におけるフェリチンのような貯蔵蛋白が存在しないので、排泄した分は日々補う必要があります。逆に考えると過剰症は起こりにくいとも言えます。

亜鉛は、体内での充足度によって吸収率が異なることは前述の通りですが、年齢によってもその吸収量が異なり、高齢者のほうが吸収量は低くなります。また、食品添加 物の酸味料として利用されるフィチン酸や歯磨き粉の成分として用いられているポリリン酸は、亜鉛の吸収を阻害するといわれており、これらを過剰に摂取すると亜鉛欠乏に陥る危険性があります。血清亜鉛濃度は一般的には 84~159μg/dLであり、80μg/dL未満を欠乏症の診断基準とし、60~79μg/dLを潜在的欠乏症、59μg/dL以下を顕在性欠乏症と診断され、亜鉛を補充する必要が出てきます。しかし、血清亜鉛濃度が正確に細胞内濃度を反映しているかはまだ明確ではなく、血清濃度を診断基準に用いて良いか議論が続いています。

体内分布

亜鉛の体内分布は、筋肉(約60%)や骨(約30%)に多く、残り10%が肝臓、腎臓、膵臓、心臓、消化管に存在しています。生体内で最も亜鉛濃度が高い組織は前立腺であり、脳の海馬(記憶や学習をつかさどっている)、網膜にも高濃度に存在しています。

排泄

摂取した亜鉛は大部分が未吸収分として糞便中に存在し、体外に排泄されます。また体内の亜鉛は主に膵液を経て小腸へと排泄されます。尿中への排泄はごくわずかですが、肝硬変などの病的状態では異常に増加したアミノ酸に亜鉛が結合して尿中への排泄が高まるため、亜鉛欠乏の原因となります。

銅欠乏症

亜鉛製剤(プロマック(ゼリア新薬工業社)等)やサプリメントで亜鉛だけを多量に摂取する場合は、銅欠乏症を生じる場合があります。これは、細胞内の亜鉛の存在量 が多くなることで、細胞内に取り込む部位(トランスポーター)の発現量が減少し、それが銅の吸収を邪魔してしまうために起こるといわれています(亜鉛と銅の吸収部位は同じです)。

そのため、亜鉛を積極的に補給する場合は、血清亜鉛濃度と併せて銅の濃度にも注意し、必要に応じて銅も摂取することが重要です。

亜鉛の生理機能

亜鉛の生理機能には、良く知られたものとして、以下の作用があります。

  • 味覚障害の改善作用
  • 創傷治癒能力の促進作用
  • 活性酸素消去作用(亜鉛含有SODの活性化)
  • 遺伝情報伝達作用(亜鉛含有酵素の正常化)
  • 免疫能の維持
  • 有害金属等の排出(メタロチオネインを構成)

その他の作用

  • 消化管粘膜の上皮細胞の保護作用(腫瘍治癒)
  • 肝硬変の改善作用(アンモニアを含む窒素代謝改善)
  • 糖尿病改善作用(インスリン分泌及び生合成亢進)
  • 慢性腎臓病(CKD)における貧血改善作用(ヘモグロビン合成能改善)

特に高齢者や上記疾患を有する方は亜鉛の摂取量や吸収率が低下しますので、積極的な摂取が勧められます。

【参考】日本臨床2016(第74巻・第7号)

2016.07ヘルシーパス提供

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