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短鎖脂肪酸の働き

2017.07.13

近年、腸内細菌が生体に及ぼす様々な影響が明らかにされてきました。腸内細菌は食物繊維を餌として酢酸などの短鎖脂肪酸を産生し生体に影響を及ぼします。今回は短鎖脂肪酸の様々な働きをまとめて紹介いたします。

短鎖脂肪酸の基礎

短鎖脂肪酸(Short-Chain Fatty Acids以下SCFA)は、炭素数が2から4の脂肪酸のことですが、炭素数が6までを含めて考える場合もあり、酢酸(acetic acid)プロピオン酸(propionic acid)、酪酸(butyric acid)がその代表的なものです。酢酸、プロピオン酸、酪酸は主に糖質の発酵で産生されます。

今回は生体への作用が新たに明らかになってきている酢酸、プロピオン酸、酪酸の働きについて紹介します。

SCFAはどこでどのように産生される?

ヒトの大腸内で、腸内細菌が食物繊維などを餌に発酵し、SCFAが産生されます。

上図のように、それぞれの腸内細菌によりSCFAが産生されます。どういった種類の糖質が大腸に流れ込むかによって、優勢な細菌叢が決まるとともに、SCFAの産生種と量が決まってきます。また、大腸内容物の滞留時間が変わると、同じ食物を摂取しても、SCFAの産生比率が異なると考えられます。右上の表の通り、摂取した食物繊維の種類によってSCFAの産生率は異なり、グァーガム分解物が最も酪酸を産生する比率が高いことがわかります。ビフィズス菌の一種であるBB536株は、酢酸を産生することが知られていますが、最近の研究で、間接的に酪酸産生菌を増加させ、結果として酪酸が増加することがわかってきました。なお、SCFAは経口摂取しても途中で吸収され、大腸まで届きにくいため、食物繊維やビフィズス菌などを積極的に摂取することが重要となります。

腸管での働き

腸内細菌によって産生されたSCFAは、大腸でトランスポーターと単純拡散により体内に吸収されますが、ほとんどが単純拡散で吸収すると言われています。以下の図のように、SCFAは大腸上皮細胞のエネルギー源として細胞増殖に利用され、さらにバリア機能を強める働きがあります。

体内での働き

大腸で吸収されたSCFAは、門脈を通して肝臓に流れ込み脂肪合成の基質として、また糖新生の材料として利用されます。肝臓で消費されなかったSCFAは、これまで末梢組織でエネルギー基質あるいは脂肪基質として利用されるといわれてきました。しかし近年の研究により、わずかに存在する血中のSCFAが、脂肪細胞や交感神経に発現しているSCFA受容体(GPR41、GPR43)により、エネルギー代謝に影響を与え、抗肥満、抗糖尿病作用を発揮することが明らかとなってきました。

【参考】日本油化学会誌 第46巻 第10号(1997),ルミナコイド研究のフロンティア(建帛社),脂質栄養学 第24巻 第1号(2015),第21回腸内細菌学会要旨集

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