1. HOME
  2. アンチエイジング情報
  3. 交差反応と食物アレルギー1

アンチエイジング情報TIPS

交差反応と食物アレルギー1

2023.12.19

食物アレルギーは乳児期の発症が知られていますが、最近では学童期~成人が発症する食物アレルギーも注目されています。アレルギーの発症メカニズムと交差反応の原因物質、注目の抗原(アレルゲン)についてご紹介します。

増加する大人の食物アレルギー

近年、食物アレルギーの患者数は増加傾向にあります。1歳未満の乳幼児期の発症が最も多いですが、小児から成人の幅広い年代でも発症が認められており、実に成人の10人に1人が食物アレルギーであるといわれています。

食物アレルギーの分類

食物アレルギーは下記の2つに分類する方法があります。

クラス1食物アレルギー

抗原となる食物を食べた後、消化が不十分な状態で消化管から吸収されたことで体内に抗体ができ(経口感作)、再度同じ抗原食物を食べ、抗体と反応することで発症します。乳幼児期の卵、牛乳、小麦などによる食物アレルギーが該当します。成長とともに消化管が発達しバリア機能が高まると約9割が寛解するといわれています。

クラス2食物アレルギー

学童期~成人に多いアレルギーで、花粉やラテックスなど食物以外のタンパク質が抗原となり、似た抗原をもつ植物性食品を食べると、交差反応により発症します。原因食物は、主に果物、甲殻類、小麦、木の実などです。いったん発症すると耐性を獲得しにくいため、症状を防ぐには原因食品を避ける必要があります。

交差反応による発症のメカニズム

対象となる抗原とは別の、類似の抗原に結合することでアレルギー反応を起こしてしまうことを、「交差反応(cross-reaction)」といいます。例えば、花粉症の方が花粉と似た構造をもつ植物性食物を経口摂取したことでアレルギー症状出ることがあります。花粉の交差反応に関与するタンパク質はシラカバ・ハンノキは「Bet v1ホモログ」、スギは「Polygalacturonase」、ブタクサは「プロフィリン」で、それぞれと共通したタンパク質をもつ植物性食品が交差反応を引き起こし、アレルギーを発症します。

交差反応性食物アレルギーの臨床症状

口腔アレルギー症候群(OAS:oral allergy syndrome)

原因食物が口腔粘膜に接触後15分以内に口腔、咽頭、口唇粘膜の刺激感、かゆみを生じます。しばらくして自然に良くなりますが、浮腫、水疱を併発したり、まれに蕁麻疹や鼻炎症状、咽頭閉塞感、下痢や腹痛、さらにはアナフィラキシーショックを呈することもあります。

花粉ー食物アレルギー症候群(PFAS:pollen-food allergy syndrome)

口腔アレルギー症候群のうち、花粉に交差反応性を示すものをPFASといいます。治療の基本は原因食物の除去ですが、おもな抗原であるBet v1ホモログやプロフィリンは熱に不安定であるため、果物は缶詰で、生野菜の場合は加熱することで摂取可能となります。

アレルギー食品花粉の種類交差反応タンパク質
リンゴ・モモ・サクランボ・大豆・キウイフルーツなど シラカバ(4〜6月)・ハンノキ(1〜6月)Bet v1ホモログ(別名PR-10)プロフィリン
メロン・スイカなどカモガヤ(イネ科)(5〜6月)プロフィリン
メロン・スイカなどブタクサ(8〜10月)プロフィリン
セロリ・マンゴーなどヨモギ(8〜10月)プロフィリン
トマトなどスギ・ヒノキ(2〜4月)Polygalacturonase

近年注目の抗原(アレルゲン)

食物アレルギーの原因となる物質は増える傾向にあるようです。近年、注目の抗原物質を紹介します。

くるみアレルギー

2023年、「くるみ」が新たに表示義務食品となりました。2018年頃からアレルギーの症例が急増し、鶏卵、牛乳、小麦に次いで4番目に多い食品となったことが背景にあります。健康志向の普及により「食べる量が増えたこと」も原因の一つと考えられています。くるみは、樹木(カバノキ科など)、イネ科植物、雑草、ナッツ類、果物、大豆、野菜、マメ科植物などに共通のタンパク質を持ち、交差反応性があると考えられます。

豆乳アレルギー

大豆発酵食品の味噌や醤油は、発酵が進むと抗原性が低下し、食物アレルギーは起きにくいとされてきました。豆乳や大豆飲料では、カバノキ科の花粉や果物と交差反応と考えられるアレルギーが出ることが知られており、大豆にアレルギーがない方でも、豆乳や大豆飲料によって発症することがあるようです。

【参考資料】ガイドライン2021、消費者庁HP、日本アレルギー学会HP、アレルギー56(5)451-456 2007、Yasuto Kondo 口腔科32(2)103~107、Yokooji Tomoharu 40(5)284-290 2015、日本豆乳協会

2023.12ヘルシーパス提供

スタッフによるブログ始めました!!